鍼師を目指すまで その1

18才前後、視力をほぼ失い、それを受け入れることで、けして病になっていても不幸になるとは限らないということを体験した私は、病とは何なのだろう、幸福とはなんなのだろうと考えるようになっていきました。哲学書や現代医学以外の治療法に興味を持ち始めたのもこの頃でした。
アトピーについては、以前よりも緩解傾向にはありましたが、薬の使用を止めると、数日で激しい痒みと湿疹に襲われ、眠れなくなるレベルでした。薬を使い続けることのリスクも鍼灸の勉強をしていく中で基礎医学も勉強しますので、ある程度は知識として持つようになっていました。できることなら薬を減らし、使わなくても生活できるレベルにまで回復したいと思うようになり、自分なりにいろいろと試してみましたが、これといった対処法はやはり見当たらず、悩みの種になっていた頃でした。
20才のとき、初めて薬以外でアトピーが緩和する体験をしました。
同じ校舎にあった鍼灸マッサージの学科に進学していた私。ある日、クラスメイトに進められ、講習会に参加しました。そこで、実技のモデルになった時の体験でした。なでるような微かな刺激の鍼を1,2分施されただけだったのですが、背中にあった湿疹が明らかに減って、痒みも消えていったのでした。
その日の体験が、その後の私の人生の主軸形成の第一歩だったと思います。
何しろ私が鍼灸師 按摩マッサージ指圧師の資格を取得しようと思ったのは、特に目指したい道もなく、進路にたまたまあったからという理由だけでした。鍼灸がどんなことに効果があるのか、一切知りませんでしたし、興味もなかったというのが正直な話です。
まさか鍼灸が、私が興味を持ち始めていた病の本質、生命の本質といったことと結びつくとは思ってもいなかったのでした。

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